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マエルの航海日誌(Le voyage de Maelle)

第28回 イタパリカ島(2008年7月)
掲載月:2010年11月

ブラジル海岸

(マエルより)

私たちは、サルヴァドール・デ・バイア湾の向かいにあるイタパリカ島に滞在している。ここでの生活は、お天気にかなり左右される。今は冬で、気温が急に変化すると、ものすごいスコールが降ったり、強風が続いたりする。ただ、これから先しばらくは、水不足に悩まされることはないと思う。私たちの給水システム、と言っても船の後ろにくくりつけたディンギーのことだけど、始末に困るほどの水を確保し続けている。

実際、ディンギーに溜まった水を、毎朝捨てなければならないくらい。船べりまでたっぷりの、まさに“満水”状態だ。それでも浮く仕組みになっているので、重さで沈んでしまう心配はない。中に浸かって水浴びできるくらいだけど、ここ何日もお日さまは顔を出していないし気温も低いので、ちょっとそういう気は起こらない。

勉強の間、少しでも晴れ間がのぞかないか、時々空を見上げてみる。お日さまが顔を出したら、岸に散歩に行ったり、小型ヨットで大好きなセイリングに出かけたりする。近くに停泊している船や、砂州の間をジグザグに抜けながら、隣の船の人が、カイトサーフィンの練習をしていないか探してみる。まだ初心者のようであまりうまくはないみたいだけれど。

今日は残念ながらどしゃぶり。まるでイグアス滝(ブラジルとアルゼンチンの2国にまたがる世界最大の滝)の底にいるみたい。大きな雨粒がドラムロールみたいな音をさせて、デッキにたたきつけている。でもこの雨が、フォンテ・ダ・ビカの泉から湧き出る、ミネラルたっぷりの天然水になるのだ。色んな病気に効果があると言われているこの水を求めて、かなり遠くから人々が、ありとあらゆる容器を携えて、この島にやって来ていた。糖尿病に効くかどうかまだ確認していないけれど、消化器系の疾患、脚気、神経炎に効果があると言われているらしい。どちらにしても、この旅で、蛇口から出てくる水を直接飲み水に使えるなんて初めてのことだ。しかもそれがミネラルウォーターだなんて!

イタパリカは、本当に緑豊かな島だ。地面を突き上げるような勢いで植物が生い茂り、水面にまで茎を伸ばしているものもある。つるが絡まった、まだ名前も知らない木々は、サルたちの棲みかになっている。彼らは好奇心旺盛で、時々、葉の間から、私たちを観察しているのが見える。島では、通りの両側にゴムノキが並んでいるのだが、ヨーロッパのアパートメントでよく見かける鉢植えのゴムノキと、とても同じ種類の木とは思えないほど立派だ。この熱帯の島では、全てが大きく育つのかも知れない。

住宅地には、電線がはりめぐらされた高い塀に囲まれた立派なお屋敷もあれば、そのすぐそばに、大きくはないが明るい色のペンキで塗られた家々もある。そして、その住宅地の向こうに、16世紀にイエズス会によって最初に建てられた教会の跡が見える。

サルヴァドールへ

ここは旅行者に人気のある島で、週末には多くの人々が訪れる。でも、夏のバカンスのフランスの避暑地のすごい人ごみとは、さすがに比べ物にならない。ただ、この週末は、島で4日間にわたって行われる聖ヨハネ祭りを楽しもうと、赤ちゃんからお年寄りまで、何百人ものブラジル人が、スクーナー船に乗ってこの島にやって来ていた。

村の広場では、やしの木で作られた小さな屋台が、ひとつ、またひとつと、日を追って増えていった。そこで売られているカシャッサ(Cachaças)、カイピリーニャ(Caipirinha)、バチーダ(Batida)といったアルコールのせいだろうか、お祭りムードも少しずつ、でも確実に高まって来ていた。人々は、広場の真ん中に設けられた大きなテーブルに集まって、にぎやかに飲んだり食べたりしているのだが、打ち解けた雰囲気で、知らない人にもすすんでスペースを譲り、気さくに話しかけてくれる。ときどき、スコールが起こり、大粒の温かい雨がたたきつけるが、お祭りの雰囲気が損なわれてしまうことはなかった。広場に来たら、まず屋台を回って、それぞれ食べたいものを買い込む。フェジョワータ(ブラックビーン、お米、キャッサバ、豚肉で作られた、ちょっと油分は多いけれど、とってもおいしいブラジルの家庭料理)から、タピオカケーキ(ここの食べ物にしては珍しく、あまり甘くない)まで、ありとあらゆる食べ物が屋台で売られている。ちょうど私が食べているものに、実は、キャッサバが入っているのだと誰かが話しているのを聞いた時には、思わず、耳をそばだててしまった。アフリカでの経験で、キャッサバを食べると血糖値があがることを、発見していたからだ。

サルヴァドールへ

お祭りの最後の夜、人々の興奮、そして喧騒は最高潮に達した。私たち家族は、友人と連れ立って、食事をしようと広場に行ったのだが、食べ終わった後、とにかくそこから離れようということになった。音楽を流すスピーカーが、考えられないほどのボリュームに合わせられていて、とても耐えられなかったのだ。ところが、ブラジル人は一向に気にならないようだった。どうしてあの音に我慢できるのだろう?私たちにも一緒にいた友人にも、限界を超えているように感じられたのだが。

海岸まで行って初めて、広場から流れてくる音楽を楽しむことができた。防波堤に腰をおろして、海風に吹かれながら聴くブラジル北西地方独特の音楽は、本当に素晴らしかった。4日間のお祭り騒ぎのあと、島はいつもの静けさを取り戻し、人々もまたそれぞれの仕事に戻っていった。これがブラジルの人々の暮らし方なのだ。

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